壮絶なチケット争奪戦を制し、行ってまいりました決戦の地、国立競技場。
天気はあいにくの雨でしたが、チケットは完売。
国立にはたくさんの人が詰めかけていました。
この日の入場者数は、ルヴァンカップにおける最多入場者数の記録を更新し、なんと62,517人。
雨の影響で東海道新幹線に運休・遅延があったことも考えると、天候さえ良ければもっと入ったんじゃないでしょうか。
新潟さんは初のタイトル獲得に向けて、名古屋は三年ぶり二度目の王座奪還に向けて、お互いに負けられない決戦。
特にうちには、今シーズン限りでの退団を表明している絶対的守護神、ミッチェル・ランゲラック選手がいます。
気付けば在籍7シーズン。
名古屋のレジェンド。
彼を手ぶらで帰らせるわけにはいきません。
「ミッチに花道を――」
ルヴァン決勝に向けて、自然とこれが合言葉になっていきました。
ミッチももちろんなんですが、名古屋でプロデビューを果たし、そしてまた名古屋に帰ってきてくれた二人の選手。
和泉竜司選手と永井謙佑選手。
グランパスというクラブで、一緒にタイトルを獲りたい。
獲ってほしい。
そんな思いもあるのです。
しかし、それは新潟さんも同じ事。
うちにもそういうストーリーがあるように、新潟さんにもストーリーがある。
決勝という舞台はそうした意地と意地のぶつかり合い。
否が応でもテンションは上がります。
開場へと足を踏み入れると、両サポーターの応援の声が響き渡ります。
北側、グランパス。
南側、アルビレックス。
両陣営とも負けじと声を張り上げます。
地鳴りの様な大歓声!
決勝の舞台として、これ以上ないくらいの雰囲気。
ゾクッと一瞬身震いさえ起きました。
それくらい圧倒的な空気感。
そんな中流れる、スタメン紹介動画。
ちゃーんと決勝仕様に編集してくるのほんとに偉い。
こんなのぶち上るしかないやん。
そしてついにキックオフ。
相手ゴール前でのパスミスを逃さず、永井選手が蹴り込み先制点!
その後名古屋の舵取り屋、稲垣祥選手の落としを、和泉選手の上手いトラップから中央へのパスに反応したのは永井選手。
追加点を奪い、前半2-0で折り返します。
先述した2人がゴールとアシストを決め、最高の気分でハーフタイムを迎えます。
しかし油断はできません。
2-0というスコアは俗に「危険なスコア」と言われます。
最後まで気を引き締めていきましょう。
とか言ってたら後半、新潟さんが三人同時交代してサイドからクロスを上げられ失点。
盛り上がる新潟サポさん。
でもまだ追いつかれたわけでもない。
こっちも負けじと声を出します。
このまま終わってくれー!と思っていた後半アディショナルタイム。
名古屋の中山克広選手がペナルティエリア内で相手を倒してしまい、主審は一度流したものの判定はVARへ・・・。
大型ビジョンに倒してしまった時の映像が流れます。
「あ、これやったわ」
隣で共に試合を見守っていた友人が一言そう言います。
僕も同じ感想でした。
オンフィールドレビューを経て、主審はペナルティスポットを指さします。
判定は、案の定PK。
見事に決められ2-2の同点に。
もうあと数分、数秒でタイトル、という所から追いつかれ、試合は延長戦に。
延長前半、PKを取られてしまった中山選手が意地の一発!
見事に汚名返上します。
こういったシチュエーションでのメンタルコントロールの難しさというのは想像に難くありません。
勝ち越した嬉しさもありますが、中山選手が決めてくれた事、それ自体に泣きそうになりました。
そのまま延長前半が終わり、残りは延長後半15分。
こんな状態でも、新潟さんは諦めません。
最後まで自分たちのスタイルで戦い抜き、名古屋は見事に崩され失点・・・。
またも追いつかれ、勝負の行方はPK戦へ。
「これはすごい試合だ」
と、自然と口に出してました。
両クラブの選手たちは全員が全員諦めずに戦い続け、両サポーターも声を出し続けて後押しします。
応援しているクラブの、タイトルがかかった一戦を生で見られる機会というのはそうそうありません。
そうした試合を見に行くのは、初の経験でした。
もちろんタイトルは獲りたい。
でも、PK戦までもつれ込んだこの試合を観ていて、思ってしまいました。
どう転んでも、両者素晴らしい結果ではないか、と。
PK戦は、5人全員が決めきった名古屋の勝利。
3年ぶり2度目のルヴァン杯をその手中に収めました。
名古屋は準々決勝でPK戦を経験していました。
そして、決勝という舞台を経験していた選手も多く所属していました。
そんな、少しの経験の差が最後の勝敗を分けたような気がします。
大型ビジョンにPKを外してしまった新潟の長倉選手(今大会の得点王)の涙を見た時、僕もつられて少し泣いてしまいました。
そうして自然と拍手を彼に送っていました。
本当なら声を掛けたかった程です。
ですが、グランパス側の応援席にいた事と、勝者側からどう声を掛けていいものかと思い悩んだ結果、精一杯の拍手を送る事しかできませんでした。
それほど、いい試合でした。
僕は別に戦術分析とか、そういったものに詳しいわけではありません。
そういう人たちから見たら、もしかしたら物足りない部分もあったのかもしれません。
けれど僕はこの試合に、「スポーツ」というものの本質を見た気がします。
お互いにリスペクトして、最後まであきらめず戦う。
試合が終わった後はお互いに健闘を称え合う。
そんな、素晴らしい試合でした。
勝負というのは、相手があってのもの。
決勝で戦えた相手が、新潟さんで良かった。
そしてそんな新潟さんに勝って手にしたタイトルというのは、タイトル以上の価値があると、個人的には思いました。
最後に。
この試合に関わる全ての人達に感謝を。
SNSなどで、誹謗中傷や簡単に他人を攻撃するのが当たり前になってしまっている昨今。
そんなものとは無縁の、リスペクトに溢れた空間が、目の前にはありました。
そういった場所を作ってくれたスタッフさんたち、選手、サポーター。
あの場にいた全ての人達。
あんなにも色んな人がいる空間で、あんなにも素晴らしい時間が作れるんだと、今思い返して感動しております。
本当にありがとうございました。
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